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学長メッセージ

食べ物の「コク」

2023.09.21

 カレーやカップ麺、コーヒー、ココア、マヨネーズなど多くの食品のパッケージには「コク」という言葉が使われています。たとえば、「あめ色玉ねぎのコクのカレールウ」「コクを味わうマヨネーズ」などという表示をみたとき、私たちは無意識に「おいしい商品」という印象を持ちます。「コク」という言葉は「おいしさ」と同義語として使われてきましたが、実際にはそうではありません。9月に広島で開催された日本調理科学会で、「おいしさを引き出すコクの科学」のテーマで女子栄養大学の西村敏英教授の公開学術講演を聞くことができました。

↑写真は8月のオープンキャンパスは農園野菜のカレーです。

 上の写真は、8月のオープンキャンパスで提供した「農園野菜のカレー」です。

 そもそも食品のおいしさはいろいろな要因で決定し、食品の素材の特性(味や香り、色など)と人に起因する体調や食習慣などに分けることができます。コクは主に食品素材特性に属する要因ですが、西村教授は「コクは味、香り、食感の3つの感覚刺激に関して、より多くの刺激が与えられた結果、複雑さ、口の中での広がり、持続性を感じたときに、認識できる現象」と定義づけ、「複雑さ」「広がり」「持続性」を3つの要素として説明しています。

 具体的には日本の代表的な調味料の1つである「醤油」を刺身につけて食べることで、複雑さが特徴となるコクを刺身に付与することができます。大豆を発酵させて作られる味噌は、発酵が進むにつれ褐色に色が付き、微生物の働きにより呈味物質や香りの成分が増え味噌の味わいが強くなります。熟成チーズは、熟成期間が長くなればなるほど、複雑さ、広がりや持続性が強くなっていきます。コクは調理や発酵、熟成といった過程で生まれてくるようです。