生活未来科には、今年も、中国やインドネシアからの留学生が入学しました。加えて、本学と交流協定を結んでいる中国の大連大学や中国ミン南師範大学から5名の交換留学生も入学してきました。慣れない日本での学生生活を、周りから支えていただき、お互いの国の伝統や文化、習慣などについてグローバルな視野を広げる機会としていただくことを、大いに期待しています
今、奈良佐保短期大学への入学を許可された皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。皆さんがこれからどの様な学生生活を展開されるのか、非常に楽しみです。
正面緞帳の上部に、奈良佐保短期大学の徽章が縫い込まれています。奈良の都のシンボルである八重桜を外側の輪郭として、人としての手本や模範を意味する鏡である、中国、唐時代の八稜鏡が内側に二重におさめられています。本学は、奈良女子大学の前身である奈良女子高等師範学校の同窓会「佐保会」によって創設されて以来、85年の歴史があり、この徽章は、奈良女子高等師範学校の徽章を参考にして作成されたものです。また、正面の式次第にある本学のシンボルマークは、スクールカラーの茄子紺を基調とし、奈良佐保短期大学のイニシャル、NとSをモチーフにしてデザインされています。奈良佐保短期大学の伝統と、若葉の間から陽が昇る未来とを示しています。このデザインから、両手で大切なものを包み込み、曲線を通して羽ばたく躍動感を見ることができます。これは、本学の建学の精神および教育理念にある自己と他者を尊重し、教養見識をもって、自ら羽ばたき、社会に貢献する行動力を表現しています。
入学生の皆さんには、この徽章やシンボルマークに込められた「素晴らしい伝統を受け継ぎ、人の手本となる生き方を通して、社会に貢献する」という精神を心に刻んで、これからの学生生活を実りあるものにしていただきたいと願っています。
さて、桜の花が咲き誇る春ですが、ある新聞に、谷川俊太郎さんの「春に」と題する次のような詩が紹介されていました。
「目に見えないエネルギーの流れが、大地から足の裏を伝わって、僕の腹へ胸へそうしてのどへ、声にならないさけびとなってこみ上げる」
今、皆さんも、これと同じ感情が体の中を巡り、これから始まる大学生活とその先にある未来への期待とともに言いようのない不安を感じ、正に、このコラムニストが言う、「思春期の心のうずきと、様々な感情に揺れ動く春の情景」が重なっているのではないでしょうか。
これから始まる学びは、決して生易しいものではありません。皆さんが抱いている夢の実現に向けて、この2年間は、自分との戦いでもあります。
心が折れそうになり、そんなに頑張らなくてもいいと自ら資格取得を諦め、楽な方に流されてしまうかもしれません。やる気がなくなり、くじけそうになる心を、どのようにコントロールしていくのか。皆さん一人ひとりの生き方の問題でもあります。
人は生きていく中で、様々な壁にぶつかります。大学は、それを乗り越えるエネルギーを身に着ける場でもあります。
大学での学びでは、模範解答のある問題に答えを出すだけでなく、簡単に正解が見つからない問題に、「何が課題なのか」を深く考え、自分の答えを導き出していきます。それを繰り返しながら、基礎となる知識や技能に加えて、思考力や判断力、価値創造力などを育み、社会における役割を果たしていくための、社会的スキルや情緒、心身の健康などを培います。大きな課題や未知なることに立ち向かう挑戦。それは、「昨日の自分」を超える挑戦でもあります。それが、人生における壁を乗り越える力となることでしょう。
そのためにも、他者との比較ではなく、自分自身と向き合い、「自分を知る」ことが大事です。要領が悪い、不器用であるなど未熟な自分をさらけ出すことは怖いですか。その怖さを振り払う勇気が、皆さんの成長の一つのバロメーターなのです。
あるがままの今の自分を100%大切な存在として受け入れ、自分を信じて、他者を尊ぶ。
「ありのままを出せる。出してもいい環境が佐保にはある。」と語った学生がいました。本学には、学生一人ひとりのありのままの姿を受け入れ、教職員共々成長する「ほっとかない」環境があります。その学生も、大学2年間で、本来の自分をだし、他者の言葉にも耳を傾け、友人からの信頼を得て、自分を信じる豊かな人間性を育むことができたのでしょう。
大事なことは、自分から逃げない。自分に言い訳しない。他人の目を気にしないで、一生懸命、真剣に生きることです。
皆さんの目指しているどの職業、どの社会でも、人が健やかに、自分らしく「生きる」ことをサポートすることですよね。そんな夢を持つ皆さんが、「真面目に誠実に生きる」ことから逃げ出すことなどできないでしょう。
このアットホームな奈良佐保短期大学で、これからの人生において、自分を励まし支えてくれる「学問や人との素晴らしい出会い」を通して、皆さんが、「夢と勇気とそして感動」の大学生活を過ごされることを祈って、歓迎の言葉といたします。
(平成28年度入学式式辞より抜粋)