本日、ここに、平成24年度奈良佐保短期大学卒業証書授与式並びに修了証書授与式を挙行致しましたところ、多くのご来賓にご臨席賜り、卒業生の門出をともに祝福していただきますこと、この上ない喜びでございます。高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
本日、奈良佐保短期大学を卒業し、短期大学士の学位を取得する者132名、専攻科を修了する者7名でございます。
めでたく卒業並びに修了を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
また、ご参列いただきましたご家族の皆様におかれましては、感慨もひとしおのこととお慶び申し上げます。
さて、卒業生・修了生の皆さん、皆さんにとって、奈良佐保短期大学で過ごした日々はどのようなものだったのでしょう。
順調に自分の目指す資格を取得できた人、実習の厳しさから、目指す資格が自分に向いていないのではないかと不安になった時、実習先で出会った子どもやお客様からの「ありがとう」の言葉に励まされ、前に進むことができた人、あるいは資格に左右されないで自分の納得できる道を模索し探し出した人など、それぞれが2年あるいは3年という年月の中で、自分と向き合うことができたのではないでしょうか。
皆さんに、絶大なる信頼と大いなる期待をこめて、これからの社会を駆け抜けるバトンを渡します。
本学で培った専門職としての基礎力や社会人としての基礎力に自信を持って、これからの人生を歩んで行っていただきたいと思います。
しかし思い違いをしてはいけません。基礎力がある、資格があるというのは、その職業について、また人として完成しているということではありません。建物の土台ができただけで、住む人に満足していただけるために、どのような家に仕上げるのかはこれからです。
保育士や幼稚園教諭として、栄養士として、介護福祉士として、あるいはビジネスに携わる人間として、自分が描く理想像を求めて、自分にできること、自分がしなければならないことのために、今まで以上に日々の鍛錬が必要となります。仕事で認められ、信頼されて「ありがとう」と言われるその日を夢見て、努力していただきたいと思います。
さらに、皆さんがこれから扉を開く社会は、どこに向かって進めばいいのか、方向が定まらず、先の見えない険しい山に登って行くようなものでしょう。
答えのない、言い換えれば、成功が保証されない社会です。
人は、失敗が評価されないと、簡単な山にしか登ろうとしませんが、たとえ頂上まで登れなかったとしても、自分なりに精一杯知恵を働かせながら、山に挑戦した勇気を評価するべきであり、安全なコースばかりを選ぶのではなく、失敗を通して大きくなれるという気概を持ち、いつかは成功すると自分を信じて、未知への挑戦をして欲しいと思います。
そして苦境に立たされた時、あなたならきっと乗り越えられると信頼して、天があなたに与えた試練だと思ってください。そのように考え、ぐっと耐える中から新たな力が湧いてくるものなのです。
私の好きな小説家、山本周五郎氏の言葉に次のような一節があります。
「人間の真の価値は、何を為したかではなくて、何を為そうとしたかだ。歴史上の有名人は何を為したかで名を残しているが、一生懸命に生き抜いて、道半ばでなくなった無名の人たちの志は、誰かが引き継いでくれている。歴史とは、大多数の無名の人たちが何かを為そうとした努力の上に築かれている。」と。
志を持つことです。常に、世の中という大きな視点から、自分に課せられた役目は何か、それを考えて生きていく志を持ち続けることが、活力の源になります。事の大小は問題ではありません。自分が志したものにじっくり取り組み、常識に縛られないで、社会における自分の役割を果たして行ってほしいのです。
もちろん、一人の人間には限界があり、一人で結果が出せる時代ではないでしょう。自分を信頼してくれる仲間を作ること、また、そういう仲間が必ずいることを信じて、人の輪を広げていってください。
本日の修了生である専攻科福祉専攻10期生は、自分たちの卒業研究論文集を「家」と命名しました。家は誰にとっても一番安心して、心も身体も安らげる場所です。10期生は、ともに学んだ仲間を家族のように考え、社会へと巣立つ自分たち一人ひとりが、お互いの心の支えとなる絆のシンボルとして、「家」を選びました。良い仲間づくりができたのだと頼もしく思います。
人は他人との係わりの中で、自分の持ち味が発見され成長していくものであること、また、他人と比較する、あるいは比較されるためではなく、それぞれが、自分という花を咲かせるために生まれて来たのだということを胸に刻み、皆さんが、「信頼」と「期待」というバトンを手に、思い思いの花を咲かせて、思う存分、社会を駆け抜けて行かれることを祈念し、加えて、私自身、学長としての最初の卒業生として、皆さんに出会うことができたことに感謝しつつ、皆さんへのはなむけの言葉といたします。
平成25年3月19日
奈良佐保短期大学長
馬越 かよ子