めでたく卒業や修了を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
今、皆さんが授与された卒業証書や修了証書は、たかが紙一枚だと思いますか。私はそうではないと思います。皆さんが入学当初に目指した「なりたい自分像」に向けて模索した、この2年間や3年間の学生生活における喜びや悲しみ、怒り、楽しみ、また、それを支えていただいた多くの方々の熱い思いなど,さまざまなものが込められた証書であり、皆さんにとってはかけがえのない誇りそのものであろうと思います。卒業証書や修了証書に込められたものを、今後とも大切に育んでいただきたいと思います。
皆さんはこれから、大学で学んだ知識や技術を活かして、進学してさらに学問を深めたり、職業人として、また社会人として、与えられた仕事に携わったりしていきます。しかし、皆さんを取り巻く状況が常に同じであるとは限りません。その時々の状況に合わせて自分で判断して、答えを出していかなければなりません。その時には正解だったことが、次には通用しないこともあります。社会の進歩が個人の判断力の先を行くことが往々にしてあります。失敗すれば上司から叱責を受け、同僚には迷惑をかけ、打ちひしがれてしまうことがあるでしょう。そんな時、失敗を通して成長するのだ、次にはきっと成功してみせるという、くじけない強い意気と、自分に対する信頼で、次への挑戦をしてほしいと思います。
ソチオリンピックで、ショートプログラムで失敗した浅田真央選手が、フリープログラムで、自分自身が納得のいく素晴らしい演技ですべり終えた時、彼女の目に光る涙には、正に「昨日の自分に打ち克った」姿があり、見る人々に感動を与え、金メダルを超える讃辞が寄せられました。
「他人に克つのではなく、昨日の自分に克つ」努力を惜しまないで下さい。
また、皆さんは大学で、他者との関係の中で「生きる」とはどういうことなのか、授業を通してはもちろんのこと、大学祭などの行事や普段の学園生活の中で身をもって学び、生きるためのたくましさを身につけたことと思います。
ある学生が「この大学では『素の自分、そのままの自分』が出せるのだ、出してもいいのだと気がついた」と語ってくれました。非常にうれしく思いました。本学はそのような環境づくりに、教職員が常に心がけているからです。
しかしそのためだけではありません。本人は気づいていないのかもしれませんが、それは彼の成長がそのように気づかせているのです。ありのままの自分を出すということは勇気が要ります。その勇気がたくましさであり、成長の一つなのです。「できなかったことが、できるようになった。」「努力した分だけ、報われることが分かった。」と話す学生もいます。それこそが大学での学びの結果であり成長なのです。
一人ひとりが、入学前の自分と今の自分を比べてみてください。きっと自らの成長に気づかれることでしょう。専門的な知識や技術は当然のこととして、心の強さ、頑強さに加えて人を思いやる優しさなど、いわゆる「人間としてのあるべき力」が体の中で豊かに育っているのが感じられるはずです。
しかし、一人の人間には限界があり、一人きりで様々なことに結果が出せる時代ではありません。自分を信頼してくれる仲間をもつこと、また、そういう仲間が必ずいることを信じて、人の輪を広げていってほしいのです。
本日の修了生である専攻科福祉専攻11期生は、自分たちの卒業研究論文集を「色」と命名しました。「色」は、自分の色、自分らしい持ち味を意味するとしています。さらに、それぞれの色を合わすことで、1色では出せない色合いが出る。色を重ねて、いい仲間づくりができたことの表れであろうと頼もしく思います。
他人と比較したり、比較されたりするのではなく、各人それぞれが、自分色の花を咲かせるために生まれてきたのだということを胸に刻んで、自信をもって、タフでしなやかに生きていってほしいと願います。
さらに、覚えておいてほしいことがあります。東北の大震災から3年たっても、まだ復興がままならず、平常の生活が取り戻せなくて、多くの人が不安と悲しみの中にいることを。東北への支援の仕方は人それぞれでいい。年1回でも東北と関わる。例えば、東北の海産物など名産をインターネット等でお取り寄せをすることなどが言われており、それぞれの人ができることを通して、あきらめない、頑張るぞという気持ちを共有して、東北の方々と繋がっていることが示されればいいと思います。
結びに、奈良佐保短期大学で過ごした日々が、皆さんにとっていい思い出であり、それが誇りや勇気の源となって、自分のために、また人のために、元気で、ヤル気で、そして本気で、悔いのない人生を歩まれることを心から願い、はなむけの言葉といたします。