本年5月に連携交流を協定したベトナムのFamily Halong 幼稚園 Vinh理事長から、Family Halong 幼稚園の教員研修や保護者懇談会で、日本の幼稚園教育の紹介や当該幼稚園の教育についてのアドバイスをしてほしいとの要請をうけて、奈良佐保短期大学附属倉敷幼稚園橋爪操園長とともに、8月29日から31日の日程で関西国際空港を出発いたしました。Noi Bai 空港では理事長自らの出迎えを受け、気さくで穏やかなお人柄に、初対面の橋爪園長からも安堵の様子が窺われました。
ベトナムの幼稚園は、日本の保育園と幼稚園が一体となった就学前の保育・教育施設で、Preschoolと呼ばれています。Family Halong 幼稚園のクラスは、2歳児クラス(25名) 教員3名、3歳児クラス(22名 ) 教員2名、4歳児クラス(25名) 教員2名、5歳児クラス(34名) 教員3名の配置で、必要に合わせて他の教員がサポートに入る体制となっています。保育時間は、月曜日から土曜日の朝8時から夕方の5時までです。
30日(土)の午前中は各クラスの保育や給食の様子を視察しました。この日は土曜日で親が家にいることもあり、出席する子どもの数は、通常の3分の2程度でした。まず、給食指導の様子を視察しました。Family Halong幼稚園では、幼稚園で朝食、昼食、間食(牛乳とパン程度) の3食をとり、家での食事は夕食だけとのことでした。給食は、園内の調理室で作られ、保護者には1週間ごとの献立表がメールで知らされています。体調が悪い子どもには、それに対応した食事が用意されています。参観したのは10時の朝食の様子で、クラスごとに給食をとっており、子どもたちは皆、美味しそうに楽しく食事をしていました。2歳児クラスでは教員のサポートを必要とする子どももいて、担当教員以外に複数の教員が援助していました。マナーや食育という点から、さらなる向上に向けて、日本の例が参考になるように感じました。
午後からは保護者懇談会で、理事長や園長先生も同席されました。まずは、橋爪園長から、倉敷幼稚園の運動会や1年間の教育集大成である生活発表会などをビデオで紹介するとともに、幼稚園の教育目標を軸とした日々の教育活動について説明しました。まさにVinh理事長が求めておられる日本型幼稚園教育の内容であったと思います。保護者の皆さんも興味深げに話を聞かれ、家庭における子どもとの接し方などについて、事例をあげながら多くの質問がありました。国は違っても、親の子どもに対する思いは同じだと感じました。
31日(日)は、前日に視察した保育内容をもとに、先生たちと意見交換をしました。今回の視察で、設立から約2年の幼稚園で手探りであるにもかかわらず、先生たちが力を合わせて子どもの成長を切に願う保育を実施されていることがひしひしと伝わってきました。それを踏まえて、橋爪園長は、時間毎の活動において、教員が保育のねらいをはっきり持っていることが重要であること、そのねらいが幼稚園の教育目標や特色に繋がっていること、また、家庭との連携が大切であり、幼稚園と家庭が一体となって子どもの成長を育むことが求められるなどを力説されました。橋爪園長による子どもを中心に据えた熱い幼児教育哲学に、先生たちは熱心に耳を傾けられ、その眼差しに、通訳なしに理解されているような錯覚に陥り、言葉を超えた心の交流があるように感じました。
お別れには、目に涙を浮かべておられる先生もおられ、短い訪問でありましたが、国を超えて、共通の目的に向けて深く響き合うことができた証であると感じました。