2015年03月05日
地域こども学科教員の澤田です。
少し前のことになりますが、1月23日(金)に東京都墨田区にあるすみだトリフォニーホール小ホールで開催された『第16回現代室内楽の諸相』(国際芸術連盟主催)で、≪平和への序奏≫という作品を発表してきました。(なんと世界初演です!)
この曲は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとピアノのための作品で、この編成はピアノ四重奏曲と呼ばれる室内楽の定番の一つです。
曲は大きく5つの部分から成っています。
第1部は、ピアノが最低音域で短3度下行(C-A)と増4度下行(Dis-A)というこの曲の2つの主要な音程を提示する導入の後、チェロがE-C-E(長3度)で始まるテーマAを歌い出します。このメロディはヴィオラ(Fis-D-Fis)、ヴァイオリン(H-Gis-H)と続きます。〔楽譜1〕
第2部は、ピアノの低音(A)と右手の6連符によるアルペジォを背景に、チェロが奏でるテーマB(C-(H)-Aの3度とA-(E)-Disの増4度)をヴァイオリンとヴィオラが受け継いで盛り上げていきます。そして、3つの弦楽器とピアノが対抗するフレーズで第2部を閉じます。〔楽譜2,3〕
第3部は、弱音器を付けたヴァイオリンが奏でるテーマC(Fis-(Gis)-Aの3度とA-Dの完全4度)をピアノの高音がトレモロで支える形で始まります。
歌はヴィオラ、チェロと繋がっていき、弦楽器によるトレモロの和音を経てクライマクスに達します。〔楽譜4〕
第4部は、のVivaceからFis-Cの減5度とD-Gisの増4度で始まる劇しい音列をチェロからヴィオラ、ヴァイオリン、ピアノの順で追いかける部分と、3つの弦楽器がユニゾンでピアノと対立する2つの部分から成っています。〔楽譜5,6〕
最後の第5部は、イ長調という明確な調性を持っており、ピアノの両手によるアルペジォの上にまずヴァイオリンがテーマD(E-A、H-Fisの完全4度、E-Cisの短3度を含むA-H-Fis-E-Cis-Cis)を歌い始めます。〔楽譜7〕この歌はヴィオラに引き継がれ、ヴァイオリンとチェロのユニゾンへと3回反復されます。この時ピアノの低音は、A-B-C-Cis-Dと上行していき、Esに達した処で変イ長調に転調して(Grandioso)、ピアノが歌(Es-F-C-B-As-Es)を分厚い和音で強奏して終わります。〔楽譜7〕
Codaは再びイ長調になり、E-Fis-E-Cisで始まる歌を弦楽器とピアノが交替で分担するフレーズからピアノの低音域の和音(AとCisの長3度)の上に、弦楽器がフラジォレットでAとEを2回奏して全曲を閉じます。〔楽譜8〕
楽器の配置やフレーズの対比の中に“対立”と“協和”を意識して作曲しましたが、具体的なストーリーを持っている(所謂標題音楽)訣ではありません。それよりは、平和という概念を音楽として象徴的に表出することを目指しました。
作曲が大変に遅れてしまい、楽譜の浄書が完成したのは(ナント!)年末の12月29日未明でした。その日のうちにコピーを取り、午後の便で演奏者に送り、本番まで3週間の日程となりました。
年が改まり、演奏会当日1月23日の朝、新幹線で東京へ向かいました。ゲネ・プロでバランスやテンポの変化を確認し、最後の調整をして本番を迎えました—開場後だんだんと人が入って来られ、私の知り合いも数人聴きに来てくれました。本番はプログラム第1番、ゲネ・プロとは打って変わった鮮やかな色彩の衣裳で演奏者が登場すると大きな拍手が起こりました。そして最初の音が響き—いよいよ演奏が始まりました。いつも初演で感じる〈ワクワク感〉と〈どうぞうまくいってくれますように〉という祈りの中、演奏は進んでいきました—そして終演……最後に最弱音PPPによるピアノの最低音(一番低いA)が鳴りやんでも暫く静寂が続いたのには感慨深いものがありました。
…余談ですが、演奏会終了後に駅近くのビルにある店へ食事に行くと、聴きに来ておられた方から「良かったです」と声をかけていただき、嬉しくなりました。翌日は4時起きの早出なので、早めに眠りに就きました。
(写真は作品の演奏終了後に、演奏者へ挨拶している場面です)