2015年12月11日
皆さんは梛(ナギ)という木をご存知でしょうか。
マキ科ナギ属の常緑高木で、比較的温暖な場所に自生しています。
本学にも何本かあって、夏のシニアワークプログラム「植木の手入れ講習」の時に、講師の方から面白い話を伺いました。
ナギはイチョウのように雌雄異株の木なので、イチョウが雄と雌で銀杏の実をつけるように、ナギにも雄と雌の木があり、10月頃に丸い青白色の実をつけます。この実を植えると比較的簡単に芽が出るらしく、「ナギを植えておくと家が栄える」と言われているのだとか。
梛の木
梛の木の樹名板
針葉樹でありながら、画像のように葉は広葉樹のような形をしており、葉脈が縦に並行に通っているのがとても変っています。ですから、この葉は葉脈の両端を持って引っ張ってもなかなかちぎることができません。
特に乾燥すると強くなるそうで、その丈夫さから夫婦の縁が切れないようにと、昔はお嫁入りの時にタンスにしのばせたものだそうです。
春日大社の境内にもたくさん植えられており、昔から榊(サカキ)のようにナギを神事に用いる神社は多いとのことでした。
調べてみると、春日神社境内のナギ樹林は天然記念物に指定されていて、少なくとも1000年以上前に植えられたと考えられているそうです。神が宿る木として、古代から大切に守られてきたんですね。
下の画像は、葉と落ちた実です。
さらに調べてみると、ナギは昔から熊野権現と切り離せないご神木で、この葉を袖や笠などに付けると魔除けになり、旅の道中を守護してくれると信じられていました。熊野比丘尼は熊野牛王法印とナギの葉を配って人々に熊野信仰を広めたとされ、和歌山県の熊野速玉大社にも平重盛の手植えと伝えられる樹齢1000年の巨木があります。
また、ナギが海の凪(ナギ)に通じることから、漁師や船乗りが航海の平穏を祈ってこの葉や実をお守りとし、一般の人も災難除け・厄除けとしてこの葉を持つようになったのだそうです。
ナギは大昔に黒潮に乗って南国から日本にやってきたようです。熊野灘・海の民・熊野信仰とつながるようで、実にロマンを掻き立てられるお話ですね。
流人時代の源頼朝と北条政子がデートを重ねたと伝えられる伊豆権現について、南方熊楠がこんなことを書いています。
「社の境内に高さ十丈のナギがあり、その葉を持たば災いを免れ、鏡に敷けば夫婦中睦まじといったが、天保三年大風で倒れてしまった。ナギの葉は筋強く、いくら引いても切れぬから力柴と呼ぶ。したがって夫婦の縁のきれぬよう、離れていても相忘れぬよう、と鏡の底に蔵めて守りとした。」(『花さく庭木の話』より)
頼朝と政子も、お互いにこの葉を変らぬ愛の証に持っていたそうですよ。なんてロマンチック♪(*^^*)
ナギの葉は裏も表も同じようになっているので裏表のない夫婦生活が送れるとか、鏡の裏に入れておくと会いたいと思う人が鏡面に現れる等、他にも様々な伝説があるようです。
身近にこんな深いいわれを持つ木があるなんて!と私はビックリしました。
縁結び(男女の縁だけではなく、ビジネスなどで大切な人とのご縁も結ぶと言うそうです。)や厄除けになるというナギの葉や実。
欲しい人はこの木がどこにあるか、大学の構内を探してみてくださいね。(^_-)-☆
でもくれぐれも葉をちぎり過ぎて丸坊主にしてしまわないようにお願いします。
総務部 坂上朋子