奈良佐保短期大学は、1931年(昭和6年)に奈良女子高等師範学校(現・奈良女子大学)の同窓会佐保会が、女子教育への強い要望の基に、佐保女学院を開設したことに端を発しています。その後、国の学校教育法の一部改正により短期大学制度が発足し、本学においては1965年(昭和40年)佐保女学院から佐保女学院短期大学に昇格し、その後1969年(昭和44年)に奈良佐保女学院短期大学と校名を変更、さらに、2001年(平成13年)には男女共学の短期大学として校名を奈良佐保短期大学と改め現在に至っています。
今では、介護福祉士や栄養士、ビジネス実務士等を養成する生活未来科と、保育士や幼稚園教諭、小学校教諭を養成する地域こども学科、加えて、留学生のための1年制の日本語教育別科をもつ短期大学として発展してまいりました。
また近年は、転職や就職のために、新たな資格取得を求めて学び直す社会人学生の増加など、短期大学の役割や機能の強化が求められています。
本学では、「自律する人」「自己と他者を尊重する人」「事象に自らかかわる人」を育てる教育理念のもとに、学生が「求める自分像」に向けて努力することを、「ほっときません」を合い言葉に全教職員がサポートしてまいりました。そして、夢と勇気と感動を共有できる人間関係を築き、短期間の限られた中で、学生自らが、どのように生きたいのか、またどんな世界を創り、それを実行するリーダーシップを発揮するのかなど、心豊かな人間性とともに社会で求められる人材の育成に日常的に取り組んでまいりました。
学生が主催する大学祭の標語には、ほぼ毎年「絆」が使われることから、学生たちが、人が繋がり合い生きていくことの素晴らしさを心に抱き、それを証明し実践するために何ができるのかを自問自答しているように窺えました。
コロナ禍の中で、学生が、感染しない、させないことに配慮しながら、人の絆が奪われることのないように、心を配り合っているのを感じて、心が熱くなりました。卒業後には子どもや高齢者をはじめとして様々な人たちと接することになる対人専門職として、専門的知識や技術の修得は当然のこととして、ボランティア活動など様々な活動に参画して、人に寄り添うとはどのようなことなのかを身をもって感じ取っているのを頼もしく思いました。
また、本学の特色である、農園のある短期大学として、栄養士養成のためだけではなく、全ての学生が農園を体験し、命を育むことをはじめ、他者と協働で作物を育てる作業を通して、人として大切なことが学べる実践教育と、自然災害に備えて、学生が地域の人たちと一緒に活動する行事として地域防災避難訓練を毎年実施することといたしました。この訓練を通して、学生たちは防災意識の高揚とともに、地域や職場において、いざと言う時の即戦力を身に付けることが出来ると期待しています。このように、教職員が具体的な取り組みを考案し実施することを通して、本学の特色ある地域貢献活動がさらに広がりを持てたことに、学生への深い愛情や教員魂など教職員の底力の広さに感動いたしました。
今後とも、学生たちが農園で育てた花を近隣に配る「花いっぱい運動」や、防災を始めとして地域の人たちの生活を豊かにする地域づくりを通して、学生たちに専門的な知識・技術に加えて、「思考力」「判断力」「表現力」に多様な人々との「協働力」など文部科学省が求める「学士力」を確実に身に付けさせ、人に好かれ地域に役立つ実務者の養成機関として、学修者本位の学びを実践し、学びたい、学んで良かったと思われる短期大学として発展することを願っています。
結びに、教職員を始め施設実習等で学生をきめ細かくご指導いただきました皆様、さらに本学の教育にご理解ご協力を賜りました地域の皆様に心から感謝申し上げまして、学長退任のご挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。
学校法人 佐保会学園 理事長 馬越 かよ子